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昨今、「従業員の健康=企業の重要な資本」との考え方のもと、健康経営を実践する企業が増えています。「企業・健保訪問シリーズ」では、さまざまな工夫で健康経営に成功している企業をご紹介していきます。

企業・健保訪問シリーズ

SCSK株式会社

 SCSK株式会社は、1969(昭和44)年創業の住商コンピューターサービス株式会社(1992年に住商情報システム株式会社に商号変更)と、1968(昭和43)年創業のコンピューターサービス株式会社(1987年に株式会社CSKに商号変更)が、2011(平成23)年に経営統合し誕生したグローバルITサービスカンパニーです。「夢ある未来を、共に創る」という経営理念を実現するため、3つの約束を掲げ、その1つ目に「人を大切にします。」とうたい、それが健康経営の推進力にもなっています。そんな同社の皆さんに、具体的な健康施策についてお聞きしました。

【SCSK健康保険組合の概要】
加入事業所数:23事業所(2016年3月1日現在)
加入者数:26,605名(2016年3月1日現在) ※被扶養者12,037名を含む

──いつ、どのような理由から、社員の健康づくりを始めたのでしょうか。


SCSK株式会社
人事グループ ライフサポート推進室長 兼
SCSK健康保険組合 常務理事 山口 功 さん

 SCSKは2010年10月に、現在の場所(豊洲)に本社を移転したのですが、それまでのオフィス環境は決して誇れるものではありませんでした。IT業界の多分に漏れず残業が多く、昼休みに経営トップが社内を回ると、社員の多くが昼食もそこそこに、デスクで仮眠をとっているような状態でした。それを目の当たりにした経営トップは「このままでは会社の未来はない」と判断し、まずは本社移転に着手しました。それを機に、さまざまな取り組みを開始したわけです。

 2011年の経営統合時には、経営理念を「夢ある未来を、共に創る」と定め、「私たちの3つの約束」の1つ目に「人を大切にします。」と記しました。これは、「経営の軸は人」と宣言したものだともいえます。社員が健康で生き生きと働くことが、生産性の高い、創造性豊かな仕事を生み、それがお客様や社会への貢献につながり、当社の成長にもつながるということです。

──具体的に、どのように「働き方」を改善していったのでしょうか?

 SCSKの働き方改革における施策は多岐にわたりますが、なかでも、2013年4月から開始している「スマートワーク・チャレンジ20」(以下、スマチャレ20)は、象徴的な取り組みになっています。

 2009年当時、当社の月間平均残業時間は35時間で、年次有給休暇の取得日数(率)は12日(60%)でした。そこで、1か月の平均残業時間を20時間以下にすることや、有給休暇取得日数を20日(100%)にすることなどをスマチャレ20の目標に掲げ、取り組んできました。

 以下のグラフは、その取り組みの結果を表したものです。2014年度には残業時間が18時間にまで減り、有給休暇取得日数は約19日(97%)にまで増え、おおむね目標を達成することができました。当初、一部の役員からは、この施策が業績悪化につながるのではないかとの声もあったのですが、経営トップの「たとえ一時的に業績が下がったとしても、必ず将来の発展につながる」という強い信念のもと、推し進めてきました。結果的には、業績は右肩上がりで、取り組み前に比べて倍以上の営業利益が出ています。

働き方改革~残業削減、有給休暇の取得~

──社員の皆さんに「スマチャレ20」を理解してもらうため、どのような工夫をされたのでしょうか。

 スマチャレ20では、残業半減運動や有給休暇の取得推進以外にも、フレックスタイム制、裁量労働制などにも取り組んできましたが、いずれの取り組みも、社員に対して、どのように動機づけをしていくかが課題でした。社員が「残業が減る=残業手当が減る」と捉えてしまうと、社員のモチベーションが上がりませんから、当社では、残業が減ることで浮いた人件費を社員に還元する約束をして、それを実行しました。また、有給休暇の取得率を上げ、オンオフをきちんと切り替えることが大切であるとの考えから、残業時間を減らすことと有給休暇の取得率を上げることをセットにして取り組んだことは、大きなポイントになったと思います。


SCSK株式会社
人事グループ ライフサポート推進室 副室長
兼 健康推進課長 篠原 貴之 さん

 また、本取り組みに関しては、各組織でも一定の目標を掲げてもらい、組織単位でも目標達成に向けて努力するよう促しました。なお、社員の残業が減った分、管理監督職の残業時間が増えてしまっては本末転倒ですから、管理監督職も時間管理の対象者に含め、残業時間を20時間以下になるようにしています。

 会社の取り組みを、社員に理解してもらうための工夫としては、毎週開催される役員会で月2回のペースで行われる勤怠実績の報告時に、経営トップから出される具体的な指示や指導を包み隠すことなく、全社員閲覧できるようにイントラに掲載しています。そうすることで、社員は、自分の上司が、経営トップに何をどう指導されているのかを知ることができると共に、経営トップの意思や想いが直接伝わります。

──働き方改革のほかにも取り組んでいる健康増進施策があればお聞かせください。


SCSK健康保険組合
事務長 加地 早苗 さん

 SCSKでは、社員の健康こそが全ての礎と考えています。そこで昨年、就業規則において、健康経営の理念として明文化しました。社員が遵守するべき基本的なルールを記す就業規則に、会社の理念を記すことに意味があると考えました。その内容は、「社員一人ひとりの健康は個々人やその家族の幸せと事業の発展の礎である。社員が心身の健康を保ち、仕事にやりがいを持ち、最高のパフォーマンスを発揮してこそ、お客様の喜びと感動につながる最高のサービスが提供できる」というものです。また、取り組みを進める上で、周囲の協力も重要であることから、社員の家族の方々にご理解とご協力をお願いするため、経営トップが自ら、社員の家族に対してつづった手紙を、これまでに3回にわたり送付しています。

 具体的な健康増進施策としては、2010年の本社移転時に、健康に配慮した食事を提供する社員食堂とカフェテリアを新設し、社内クリニック、マッサージを受けられるリラクゼーションルームを拡充しました。また、同年11月には禁煙キャンペーンの第1弾を実施し、同時にウォーキングキャンペーンの第1弾も実施しました。2013年にはそれぞれの第2弾も実施しました。



 禁煙については、所定労働時間内の喫煙を禁止することを就業規則に制定し、一部オフィスに存在していた喫煙ルームを廃止し、2013年10月には全オフィスを完全禁煙にしました。2014年には、メンタル疾患対応強化のために精神科の産業医を配置しました。さらに、悩み事が軽いうちに、何でも相談できる「カウンセリングルーム」を開設しました。そして、2015年3月、経営トップが「健康経営推進最高責任者」に就任。その翌月から、「健康わくわくマイレージ」というインセンティブを導入し、現在はこれに注力しているところです。

──「健康わくわくマイレージ(通称:わくわくマイル)」とは、どのようなものなのでしょうか。また、インセンティブの内容についてお聞かせください。


 健康に良いとされる5つの行動習慣に毎日取り組み、月単位でポイント化するものです。また、健康診断の結果もポイント化します。これら2つのポイントの年間合算値を評価基準としてインセンティブを支給しています。このインセンティブは、個人単位と組織単位の2階建てになっています。組織の平均ポイントが一定数以上であれば、その組織に所属するメンバーにインセンティブが支給されます。頑張った組織へインセンティブを支給することで、組織ぐるみの取り組みを推進しています。インセンティブは、前年度に取り組んだ分のポイント数に応じて、翌年6月の賞与に反映されます。

 取り組み初年度となる2015年度のわくわくマイルには、対象となる社員の99%が参加しました。100点満点でいうと75点以上を達成レベルとして、4ランク(プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズ)に分けたのですが、達成レベルをクリアできたのは全体の45%でした。2015年度の成果としては、もう一歩のところでした。わくわくマイルは、2016年度も継続して実施しており、本年度に入り実践状況がさらに向上しています。全社員の行動習慣の平均ポイントがインセンティブの達成基準を超えました。組織別でも、8割以上の組織が基準を達成しており、当初の目標レベルに達してきています。


 なお、わくわくマイルにはKENPOSを使用していますが、これは、健保組合としてではなくSCSKとして導入しています。会社から全社員に歩数計を配布し、社員が自分で管理画面にアクセスし、日々の数値や行動項目を専用のシステムに入力するようになっています。まだ構想のレベルではありますが、将来的には、この取り組みを他の加入事業所の皆さんや、社員の家族の皆さんにまで広げて、医療費削減につなげていきたい考えです。

──健康施策に取り組んだ効果や、社員の皆さんの反応はいかがでしょうか。

 今年の健康診断の分析はこれからですが、「健康わくわくマイレージ」に取り組み始めて1年が過ぎましたので、健診結果や医療費の推移に、どう反映しているのか楽しみに待っているところです。


 社員の反応については、「健康わくわくマイレージ」の導入により、健康に対する意識が大きく変化したことが明らかになっています。アンケート調査の結果によると、「健康わくわくマイレージ」の導入前は健康に対する意識が高いと回答した社員が19%だったのですが、導入後は55%にまで上がりました。意識が低いと回答した社員は20%から4%に減りました。また、行動習慣についても、大きな変化があったことが分かりました。ウォーキングの実施率は、2014年度が34%だったのに対し、2016年度は74%に上がり、朝食の摂取率は71%から88%に上がりました。喫煙率は2008年度に36%だったものが2016年度には19%にまで下がっています。

──コラボヘルスには、どのように取り組んでいますか。


 体制としては、事業会社の人事グループの役員が健保組合の理事長を兼務するなど、事業会社の主たる責任者が健保組合の主要ポストを兼務しています。

 また、事業計画を立てるときには、統括産業医も含めて、健保組合と主要事業所の人事で、月に1度の定例会議の場を設け、双方の方針を擦り合わせています。これとは別に、年に2回、健康推進委員会を設け、全事業所の人事から現場の意見を聞き、それを健保の施策に反映するなどしています。そうした中で、これまでにコラボヘルスとして取り組んだ施策は、主に次の2つです。

  • ① 重症化予防の協力実施
    具体的には糖尿病の重症化予防として、腎臓病の悪化を防ぐような施策に取り組んでいます。2015年度にスタートして、現在67名が参加しています。
  • ② 禁煙推進の協力実施
    コラボヘルスの一環として禁煙を推進することで、個人の実情に合った選択肢で実施することができており、禁煙成功率は71%と高い効果を上げています。具体的には、禁煙外来などで治療を受けた場合は、補助金を健保が負担し、会社も補填します。

 他にも、人間ドックは、35歳以上であれば本人負担なしで受診することができ、100%に近い受診率になっています。インフルエンザの予防接種も事業会社と一緒に実施し、健保が3000円まで補助金を出し、被保険者については55%が接種しています。また、高齢者の保健指導や、定期健診も共同で実施しています。

──健保組合としての、今後の目標があればお聞かせください。

 事業会社との連携をさらに強化していきたい考えです。そのために、各事業会社の健診結果や、レセプトを含めた分析ツールを導入し、各事業会社の改善すべきポイントを整理しているところです。また、ハイリスク者とその予備軍についても、データ分析をしながら、事業会社と共にフォローしていきます。特に健診結果で悪い数字が出ているにも関わらず病院に行っていない人については健保組合で把握できますから、そういう人を、事業会社と連携しながらフォローし、100%の医療受診につなげていくことが目標です。

 高齢者の健康保持増進については、当健保組合の場合、高齢者率が低く、被扶養者を含めて170名ほどしかいません。しかし、ここに該当する人たちの医療費が高いので、この部分を改善していきたいと思っています。方法としては、健康相談のさらなる徹底のほか、60歳になった人を対象に「還暦記念健康診断」のようなものを設けて、人間ドックを受けてもらうとか、「還暦記念歯科治療キャンペーン」と称して、65歳になる前に歯を全部治してもらうなど、工夫を凝らした健康増進施策に取り組んでいきたいです。

──健保組合として抱えている課題や、国への要望などについてお聞かせください。


 ほかの健保組合さんと同様、財政としては厳しい状態です。財政を圧迫している主な理由は、やはり、年々増加する高齢者の納付金です。なおかつ、当社は前期高齢者の数が被保険者と被扶養者を合わせても非常に少ないので、医療費の乱高下が激しいという実情があり、財政の負担が読みにくいということが運営上の課題になっています。ただ、これから前期高齢者数が増えていくことは確実ですから、今ある取り組みを定着させていくことで社員と社員の家族の健康寿命を延ばし、医療費増加を抑制していけるよう努力していく考えです。

 なお、「高齢者が増えて医療費が増加したので、企業で負担してください」というのは、あまりにも後手後手の対応だと思います。健康寿命を延ばすには、若いうちからの行動習慣が重要ですから、国をあげて、若い世代の健康意識の醸成に力を入れていただきたくお願いいたします。企業としては、先手を打つつもりで医療費削減につながる健康増進施策に取り組んでいきますので、どうか国にも一緒に取り組んでいただきたく思います。

SCSK株式会社 人事グループ ライフサポート推進室長 兼 SCSK健康保険組合 常務理事 山口 功 さん
「健康経営を推進するにあたり、会社が一定の強制力を持って、社員を巻き込んでいくことは、健保組合と共に保健事業を推進していくうえで、とても重要なことだと思います」

SCSK株式会社 人事グループ ライフサポート推進室 副室長 兼 健康推進課長 篠原 貴之 さん
「当社の食堂で食事をする社員が意識的に野菜を食べていたり、社内で久しぶりに会った人が減量に成功していたりして、この1年で健康を意識する社員が増えたことを実感しています」

SCSK健康保険組合 事務長 加地 早苗 さん
「社員の皆さんの健康は、社員自身のためであり、会社のためであり、健保組合のためでもあるので、3者のwin-win-winにしていきたいですね」

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